その日、母の施設に到着したのは、ちょうど
おやつの頃。

これからね、おやつだそうだからね。

春物を持ってきたので、母がおやつの間に、
冬物と交換しておけばと思い、

ママがおやつの間に衣替えをしておくからね。

アタクシは、母の居室で入れ替えをしました。


まあ、こんな美味しい和菓子を食べたのは、
初めてよ。美味しいわぁー。

母の大きな声が、ユニットの一番端にある、
部屋にまで、聞こえてきました。

ほんとに美味しくて言っているのだろうか。

認知症を発症してからは、老舗の和菓子も、
スーパーで売っている和菓子との区別がつかず、
すべてが、「美味しい」の一括り。

美味しいわぁ、と声に出すと、スタッフさんが
喜んでくれると思っているからなんでしょうか。


ワンコ達は、母達のおやつになる直前に、彼らも
おやつを貰い、それぞれの居場所にリードで
繋がれます。

母達全員が食べ終わると、リードを離して貰い、
自由になります。

面会の際、母におやつを持って行き、居室で
食べようとするとワンコ達が入ってくるときが
あります。

すると、母は、自分が食べないで彼らにあげた
がります。

そこで、母だけにではなく、皆さんでとおやつに
出して貰うように持って行きます。


母が美味しいといった和菓子は、少し前に、
持って行った叶 匠壽庵の「あも」というもの。

パッと見は、羊羹のようなのですが、求肥が
真ん中にあり、まわりは柔らかいつぶ餡。

歯がない方にも召し上がれるものなので、よく、
買っていきます。


おっかさん、初めてとちゃうやん。
40年も前から、食べてるもんや。

記憶に留めることが出来ないから、なんでも、
初めてになってしまう。

ま、刹那の間だけれど、美味しければいいと
しましょ。

007


母がいなくとも、食後に一口、甘いものを
食べたいアタクシ。

スーパーの大福でもいいのですが、近所に、
和菓子屋さんがあるので、買ってきました。

昔からのお店で、アタクシが在宅介護をして
いること知っている店員さんと話しました。

日持ちのするものをというと、聞かれました。

あら、お母様は?

施設に入所していると言うと、

それは、よかった。で、ご近所ですか?

いえいえ、大田区の特養は400人~500人待ち。

あら~・・・・。